人独りの命の重さ

言葉は生き物。

今から一か月くらい前のこと。

「たかが、先輩に叱られたくらいで死ぬかね」

「この事件は長引くと思いますよ、火消しにやっきになってるようですけど」

あたしがカチンときたのは「たかが」という言葉。

思わず先輩に反論してしまった。

人、独り死んでいる。

その人の「死」が原因で、舞台は延期かもしれない。

「そんな目立った子じゃなかったのよ」

他の先輩がつぶやく。

「死」より、他の舞台評判が気になるらしい。

目立たうが目立たなかろうが、人の命の重さは一緒だ。

トップだろうが、脇役だろうが、同じ命に変わりはない。

言葉は生き物だ。

一度発せられてしまえば、取り返しはつかない。

本人の意図としないところでひとり歩きしていく。

「たかが」

なんて嫌な言葉なんだろう。

もし、誰かが助けを求めたのなら、迷わずその手に触れて欲しい。

そこで留まる命もあるかもしれないから。