アップルパイを買って

もうすぐマーが亡くなった時間。

前の日の夜に鶏のモモ肉を食べて、それが最後だったのかな。牛乳に浸したカステラも食べさせた気がするんだけど、あまりに昔過ぎて。

焼場に連れて行くときは、粉雪が舞ってた。10月に降るなんてね。

保土ヶ谷だったか、戸塚だったか。

あたしが号泣してたから、前の家のおばさんが、うちのおかんが死んだのかと思って声をかけてくれたっけ。

おかんは癌だったし、マーはシニアだったし。あたしの30代前半はおかんとマーの介護だったな。

アップルパイを焼いてると嬉しそうに鼻をクンクンさせてた。

お家をいまも護ってくれてる。

帰りをずっと待ってる。

ねえねも、ずいぶんと年を取ったよ。

お前と同じように白髪まじりだ。

足腰も弱くなってね、耳も遠くなった気がするよ。

仔犬の頃にソファーをかじって破壊したことや、買ったばかりのローファーをかじられたことも思い出すけど、お前があたしの膝の上に頭を乗せてウトウトしてたあの「重み」を思いだす。

いくつになっても慣れないな、この空虚感は。

ほんと、さみしい。