秘密の花園

・・・私ね。

藍たちが安心して遊べる庭を裏庭につくる作るつもりだったんだ。

だから「竜の住む庭」ってしたんだよ。

えっ、そうなのかい?

そうなんだよ

叔父の家にいた時、15時になると藍は庭で遊ぶ時間。叔父は水やりしながら、藍は庭でおトイレしながら小一時間遊んでた。

藍、黄昏ちゃうよ。

そうだね。、叔父さんところ植木、ねねん所に持ってきちゃったしね。

母が癌になった時、母は庭から出たがらなかった。

あんなに開放的だった、活動的だった母が、家にこもるようになってしまった。

だから、私はクワとスキを持って、庭に季節を作ろうと思ったんだ。

必死だったよ。母は私の農作業姿を見て大笑いだった。

50種類以上のバラを育てたよ。わからない事は「サカタのタネ」の電話相談室。

バラに合う季節の花、ハーブを。

バーネットの「秘密の花園」みたいに。

キャサリン・モーレー

亡くなった娘のためにご両親がオースチンのバラの名前を付ける権利を買ってつけた。

スイレン咲き。

母が大好きだったバラ。デビット・オースチンのナーセナリーから初めて買った。

今は枯れちゃった。

エンプレスジョゼフィーヌ

オールドローズの名花 香りに特徴があって少しスパイスの香り。朝、水やりの時に葉っぱに触れると、とてもいい香りがしてた。これも、枯れちゃった。

今、残っているバラって10種類あるのかな。

母が死んで、私と母の庭も死んだんだ。心も死んでしまった。

どのくらいの日々を泣いてたろう。お酒を飲みながら、庭と母の墓で。

・・・もう一度、庭を作ろうって思ったのは、お前が来てからなんだよ、藍。

そうなのかい?

そうだよ、平坦で、藍の脚に負担のないような。いつも、お前が笑っていられるような。

老いても安心して日向ぼっこが出来るような。

叔父の家から藍を引き取って半年くらいしか、川崎にはいられなかった。

私の仕事のせいだ。家から通っていると仕事が間に合わない状況になったからだ。

私一人なら夜中でも帰れるけど、藍を一人きりで、家に置いておけなかった。

藍は毎日、車に日参してたね。毎日、毎日。帰りたい、帰りたいって。

私は365日、藍にあやまり続けた。

でも、ねねちゃん、約束守ってくれたじゃないか。藍はおうちにいるんだよ。

・・・私は守れてないよ、藍。

・・・証拠を残すつもりでブログを始めたんじゃなかったんだ。

だけど、誰が何をしてしまったのか、証拠が残っていた。

悪いほうにむける力が11月から働いていたのも事実。

でも、子供の将来がかかっていると「情」をかけてしまったのは、この「私」なんだ。

「藍」とその「子供」の命を天秤にして。

もう、いやだ。

どうしたら、藍を助けてあげれた?

どうしたら、苦しまないでいられた?

どうしたら、藍を救ってあげれたの?

眠れないんだ。

馬鹿だね、ねねちゃんは。お庭をつくればいいじゃないか。

藍はちょっと寝てるだけだって言ったろ?

でも、藍はもういないんだよ、頭がもう追いつかないんだ。

心のバランスが取れないんだよ。

あぁ、重いんだよね、そういうの。

藍は忘れないよ、じじのいなくなった家で、藍だけが残されたんだ。

音がなんにもないんだ。ケージの中で音のないテレヴィをみてたよ。

真っ暗で。お腹も痛くて。

そしたら、ねねちゃんがきたんだ。

「藍ちゃん、遅くなってごめんね」って。

藍、忘れないよ。嬉しくて、嬉しくて、ねねちゃんの顔がわからなかった。

ねねちゃんはいつだって約束を守ってくれたじゃないか。

藍のねねちゃんは強いんだ。

藍もねねちゃんが約束を守ってくれたみたいに

必ず、ねねちゃんのところに帰るから

ねねちゃんは「秘密の花園」で待っていて

わかったかい?