一昨年のあたし。
人参とセロリをすりおろして必死に藍リンに飲ませてた。
無農薬人参を箱買い。
一日何十ミリ飲ませなくちゃならなかったんだっけかな?
腫瘍とかは一切言われなくてね。食べ物だって。
胆嚢に胆泥が溜まってるんじゃないかって。
藍リンは食べないんじゃなくて、食べたくても喉に通らないんですって言っても食べさせてくれって。わがままで食べないんじゃなくて、食べたいのに舌が動かない。
関東と関西を行き来しているお医者さんで、針を打ってもらったら弱った心臓も元気になった。旧盆を挟んでしまって不安だったから、どうしたらいいか尋ねたら、そんな急をようする状態じゃないって言ったよね。止まりそうな心臓を抱えて毎晩「はやく夜が明けてほしい」って。「はやく台風が過ぎて」って。
死んだあと、エコーの映像。胆泥なんてどこにもなかった。
死んだあと、救急でもらった資料をいま行っている病院に行って診てもらったんだ。
心臓も逆流してるって言われたから、だからACE阻害剤も飲ましてた。でも、心臓の逆流なんてなかった。
いきなりの後出し。あたし、6月からずっと言ってきた。
検査もしてくれって、言ってきた。
日本人は律儀だから美容院や歯科はすぐに変えるのに、医者は変えない。
変に気を使って変えられない。
でも、疑問に思ったらセカンドオピニオンを聞かないと。
それでも、タイミングがあってそのタイミングを逃すと、あたしの藍リンみたいに死んでしまう。
悪い方へ行くように。人間関係が悪くなるように。そう仕向けていた「ある感情」があったのも事実。もしそこに行きさえしなければ、まだ藍リンは生きていたんじゃないかと思う。
世の中には「行ってはいけない場所」「会ってはいけない人」「聞いてはいけない言葉」「見てはいけないもの」そんなものがまだまだ存在する。
どうか、面白半分でそんな場所に行かないでください。どうか興味半分で「開けてはいけないもの」を開かないでください。夏だから怪談でテレビやYouTubeでたくさんそういうものが放送されるけど、観るだけでそういうものたちはあなたの後ろまで来てしまうんです。あたしみたいに仕事で行って後出しされたなら仕方ないけれど。
甘酒もいろいろ作った。必死で作った。
藍のために何かできることが幸せだった。一昨年のいまごろは藍リンはまだあたしの側でブフォブフォしてた。
少しでも、その幸せが続いてくれるんだったら、あたし、何でもした。あたしの藍リンを返して。
それでも
藍リンは死んじゃった。
仔犬は無条件にかわいい。
老犬は不条理にいとおしい。