たかが一本、されど一本

朝ごはんを作りながら、振り返ったら

ガラス戸の向こうから一直線にシュナーズが寝てた。

癲癇で病院にウィちゅきーを連れて行った時に

「前歯は抜けやすいですからね」と言われた。

・・・そうなんだ。

昔の犬や猫なんて歯が抜けるなんてなかった。

自分で獲物を捕って引きちぎるのに、前歯がなかったら引きちぎるなんてこと出来ないはずだもの。

ウィスキーの歯はそんなやわじゃなかったよ。

慰めかもしれないけど、そんな簡単に抜ける歯じゃなかった。

だから、とてもショックだった。

他人にとっては、どうでもいいことかもしれないけど、

あたしは死ぬまで歯を取っておいてあげたかった。

たかが一本。されど一本。

他人には理解できない想いだって世の中にはある。