篠田の藪

篠田のお背戸の ふるさとで

こどもに焦がれた 親ぎつね

親ぎつね

お背戸のお背戸の 赤とんぼ

明日もお藪に 来てとまれ

来てとまれ          (野口雨情『篠田の藪』)

誰もいない。

とんぼがね、飛んでいるよ。

今年は、とんぼが早くてね。

ねっ、藍ちゃん。

三カ月前は、この場所に立っていたんだよね。

赤とんぼかわからないけど、いろんな種類のとんぼが飛んでいてね。

私、想い出しちゃったんだよ。

藍ちゃん、突然、ガタガタ震えだすから、抱っこして、よく「篠田の藪」を歌っていたなって。

私の胸にしっかり顔を寄せて。

「ゆりかごのうた」

「歌を忘れたカナリヤ」

「浜辺の歌」・・・

流行りの歌はあまり好きじゃなかったから、童謡ばっかり歌っていたね。

藍、もっとはやくにこんな仕事を辞めればよかった。

藍、ずっと我慢させてごめんね。ずっと心配させてごめんね。

いつも、こんな風に寝ていたのに。かわいいな、なんてかわいいんだろう。

藍ちゃん 藍ちゃん 藍ちゃん

なんで、藍ちゃんだけいないの?

藍ちゃんに会いたいよ

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