異犬たちとの夏

本日は「土用の丑」の日でございますわね。

御多分に漏れず、あたくしもイベントにのるタイプでございますよ。

藍がね、大好きでしてねぇ、うなぎ。

シニアざんすからね、肝臓を養生させようと、食べさせてたんでございますよ。

まさか、異犬になっちまうとは思いもしませんでしたよ。

映画「異人たちとの夏」に出てくる、浅草の「小柳」今は改装されちまったそうですけど。

甘いタレが、懐かしいですわね。

死んだ両親と息子のお話。あの映画は監督も俳優も好きじゃないけれど、とてもいい映画でしたわね。最後の「今半」のシーン。頭が下がるシーンでございますよ。そっちの世界に連れて行ってくれ・・・という気持ち。いやんなっちまいますね。

藍も「異犬」になっちまいました。

藍&シュナーズの為に、「国産鰻の白焼き」を求めてデパートメントストアへ、GO。

あたくしのはこれ。

東京 「なかお」 もともとは山口県下関のフグの卸と割烹料理屋さん。現在はお持ち帰り用のみ。

持ち帰った鰻。卵を溶きまして

鰻の白焼きを撒いて

「う巻き」の出来あがり。本日はだしは無しざんす。鰻と卵の味のみで勝負。

藍リンに。

う巻きと鰻の白焼き 菜っ葉の鶏雑炊

うまいか?

いいよ、いいよ、生きているからほおばれる。

あたくし用 ひつまぶし。ちょこっとお上品に。おほほ

お裾分けに、みぃちゃんとこに鰻の白焼きを持っていたのだ。

しんちゃんも、らんちゃんも美味しく召し上がれ。

実は、あたくし、鰻はどちらかっていうと「苦手」なんざんす。

夏になると、そりゃぁ、食べさせられましたよ。本当に美味しいのは秋口ですけどね。

亡くなった父は「鰻」が大好物でしてね。病院から抜け出して食べに行ってた。死んでしまうんだったら、食べるのを我慢して数日生き延びるより、大好きなものを食べてあの世に行ってくれたことのほうが、今となっては、娘孝行の話でございますけど。

ひとつだけ、父に対して「鰻」で後悔がある。

「神田」にアルバイトに行った。夏だったから父に

「『きくかわ』の鰻をお土産に買ってくるね」と言って家を出た。

東京 神田 「きくかわ」

その日、夕方に雨が降ってきちゃった。

電車で匂いが蔓延するのが嫌で、私は父との約束を破ってしまった。

その年の9月1日に父は鬼籍に。

匂いくらいどうでもよかったじゃないか。

「そうか」と笑った顔が忘れられない。食べたかったろうに。

藍も父も母も、祖父も祖母も「鰻」が大好きだった。

「鰻」を買い求めながら、デパートメントストアで号泣。

涙が溢れて仕方ない。私は愚かな娘だ。

食べさせてやりたかった。

残されたものは異人たちを思い出して、ただ、詫びをするだけ。