人魚姫の「声」

もののけ姫の主題歌を歌った「オランダの至宝」といわれていたオペラ歌手がいる。

彼はオランダ政府給費留学生としてアムステルダム音楽院に留学。

5階席の最後尾席にも届くビブラート。劇場が共鳴するのだ。

唯一無二の歌手だったと思う。ひょんなことから映画の主題歌を歌うことになった彼は一躍脚光を浴びることになる。

主題歌を歌った後と歌う前では「声」が違ってしまった。

「有名」になることと引き換えに「声」を失ってしまったのだ。

これがいいことだったのか、わるいことだったのかあたしにはわからない。

アンデルセンの「人魚姫」は人間になりたかった。人間の王子に恋をしたから。

魔女は「人魚姫」に取引を持ち掛ける。

「人魚姫」は人間の「脚」のを得るために「声」を魔女に引き渡した。

「声」を失った「人魚姫」

どうやって王子に「人魚姫」だと理解してもらうつもりだったのだろう。

最初から王子に理解してもらうつもりはなかったのだろうか。

一目会えればよかったのだろうか。

思い悩むことがある。

どっちの道を選んだとしても、失うものがあるのだ。

何かを得ようとしたら、何かを失うのだ。

時分が選んだ道を信じるしかない。

あたしは「声」を大事にしたい。

あたしは「信念」を大事にしたい。