広い空の下

弟くん。

チリからもう帰ってきたいらしい。

砂漠やね。

愚痴をこぼしたり、ぼやく子じゃないんだけどね。

毎日、ラインでやり取りしてるけど、取りこぼしあると、後でとんでもないことになるから、問題のありそうな単語は要チェックなんだけど、今のところないんだよなぁ。

フランス人系のやってるパン屋さん。かなりレベルが高いらしい。おされな感じ。もちろん価格も高い。

「パン屋の写真を撮ってこい!」てラインしたら、「少し離れた場所だから日曜日じゃないといけない」と返事がきた。

シュナーズ部屋の参考にいろいろ写真を頼んであるのだ。

「×××君は、『キレイなお姉ちゃん』ばっか撮ってないで(笑)」

在学中、よく弟は言われてた。

『キレイなお姉ちゃん』を撮ってるほうが金になった。画材買うにも金が必要。背に腹は代えられぬ。

手を抜けない子だから、気に入ったものでないと「提出」出来なかった。「提出」しないというのはどんなに素晴らしかろうが「評価」されることはない。「評価」がなければ「単位」はもらえない。

だから、教授たちが嘆いた。それは「外に出てからやればいいから、君はまだ『学生』なんだから」

不器用だから仕方ない。

「席は取っておいてやる、いつでも帰ってこい」

人の上に立つものの責任。人の格というものはそういうものだと思う。

大学を中退した。当時「中退一流」って言葉が美大ではまことしややかに言われていてね。いまおもえば、もっと複雑な事情があったんだろう。

「酋長の系譜」新正卓

弟にラインして確認したら、インディアンネームは「サンダーバード」

精霊の名前を貰えるなんて、よっぽどのことをしたんだろうな・・・と思った。

弟の恩師の一人、新正卓教授。写真家。

袂を分かっても、恥ずかしくない仕事をしてこいって思う。

どこかで必ず弟の仕事をみていてくれると思うから。

恩師はいつまでたっても「恩師」

広い空の下、世界は繋がってる。