黄泉平坂リターン

去年、ううん、一昨年から嫌な予感がしてた。

だから、去年の7月のお盆がはやく過ぎてくれればって。だから、お盆が過ぎて「安心した」とかかりつけのドクターに言ったら

「8月もお盆ありますから(笑)」

奈落に突き落とされた。

その一か月後、本当にお盆に逝ちゃった。

送り火の翌朝。 帰って来るときは早く帰ってこられるように馬で。 あの世に戻る時はのんびり牛で。 牛で黄泉平坂を下る...

私の「嫌な予感」はあたる。「気のせい」と言われても、その何か月後には「だから、言ったじゃないか」ってことばかり。私にしかわからないことがある。でも、それは誰にも理解が出来ない。

朝、5時ちょっと。

ここに散歩を来るのは久しぶり。膝を痛めてるからリードの引きの強い子とは散歩できない。

ここね、一昨年には毎日、藍と来てたんだよ。

去年の頭からねえね、脚を痛めちゃってね。

ミミエルも藍と歩いてきたね。

一昨年の11月、12月はベッドにFramを寝かせて、点滴によく通ったよ、この坂道。

病院の帰り道。この公園で、楽しそうに、ヨタヨタ散歩をしてた。

写真を載せたくても、骨と皮の写真しかなくて。データが飛んじゃった。

正直、この公園にくるのも辛くてね。

脚なんて痛み止めを飲んで藍を連れてきてあげればよかった。

藍はずっとこの坂を下って来たがってた。

この坂を下りたら川崎に帰れると思ってたんだろう。坂の上からずっと下を見下ろしていた。

毎日、何回も、駐車場へ行き、毎日、何回も、私は「嘘」をつく。

「藍ちゃん、川崎に帰ろうね」

黄泉平坂なんだよ、私にとっては。

お前たちとなら、振り返らず、この坂をのぼきれるか?