八月晦日、はつみですね。
いまから数十年前。
病院で病室で寝ているはずの父を、洗い物などをためてあるランドリーでみかけました。笑いながら、私をみながら頭を掻いていました。
その後、病室で私を見るなり父が、本当に優しい笑顔で私をみながら、頭をなぜてくれましたっけ。あんなに大きかった父は、本当に小さくなってしまってました。
その、数時間後の九月一日、父は66歳の若さで亡くなりました。
庭の百日紅を父の枕元に供えました。
庭に植える百日紅は新しい家を建てる時の「床の間」にするためなのだよ、幼い私に父は教えてくれましたっけ。「床の間」なんて、最近の家にはないのでしょうね。
・・・忘れてた、私は生まれてこのかた八月は介護ばかりしていたんだね。
父も、母も、祖父も叔父も。そして、藍も。
藍ちゃん、どこにいるの?お返事してよ。
大丈夫?って何故きくの?
大丈夫なわけないでしょ。私の藍が死んじゃったんです。
何故、おのれの正義をかざすの?
正義なんておのおの違うってわかりませんか?
何が正しいかなんて、人それぞれだと思いませんか?
大事な宝物が私の目の前から燃えて消えてしまったんです。
手で触れる事も出来ず、声を聴くことも出来ず、あの温かい柔らかい幸せなものに頬を埋める事も出来ないのです。
打ちのめされてる人間に、どうして「命は限りのあるものだ」とおのれの宗教を押し付けるのですか?
人をどん底に落とすのが宗教なら、私はいらない。
正義で心に刃を刺されるなら、そんな正義なんてくそくらえ。
藍ちゃん、起きてきたの?
お水飲もうね。
藍ちゃん 藍ちゃん 藍ちゃん
なんて、かわいいんだろう
どうせ、死んでしまうなら、ずうと、何もせずに一緒に寝ていてあげればよかった
私の後を、ずうと、追っかけてきてたのに
会いたいよ 会いたいよ 会いたいよ
会って「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」って抱きしめたい